2011年8月9日火曜日

HDMFメールマガジン第3号

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経営×デザイン=地域産業の未来を創る!

北海道デザインマネジメントフォーラム(HDMF)
メールマガジン                  
                       Vol.3 2011.5.2

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★☆ HDMFメールマガジン第3号!! ☆★

━【目 次】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【1】デザインマネジメントセミナー報告
   ◇3/10「地域ブランドづくり デザインが成否の鍵を握る」
    -ブランドネットワークインセプト渋谷 清氏をお迎えして-
     
【2】デザインマネジメントコラム 
   ◇「付加価値、基本価値」をもう少し掘り下げてみる!

【3】デザイン関連のイベント・必読ブログ紹介
   
【編集後記】

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【1】デザインマネジメントセミナー報告
   ◇12/21「地域ブランドづくり デザインが成否の鍵を握る」!
    -ブランドネットワークインセプト渋谷 清氏をお迎えして-
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去る3月10日(木)、
札幌市立大学サテライトキャンパスを会場に、
「デザインマネジメントセミナー」を開催しました。

今回は、昨今、道内各地で活発化している
「地域ブランドづくり」をとりあげ、
その鍵となる「地域の価値を伝えるデザイン」
をテーマとしました。

参加者は、22名。
講義とワークショップを交えたプログラムにより、
講師と参加者、双方向の対話も充実し、
大変、盛会となりました。

最初の講義「地域ブランドづくりとデザインの役割」では、
ブランドコンサルタントとして全国で活躍されている、
ブランドネットワーク・インセプト代表の渋谷清氏
を講師としてお迎えしました。

■ブランドネットワークインセプト
http://homepage3.nifty.com/incept/

あらゆるブランドが必ず備え持つ「価値の源泉」の重要性、
地域において、どの様な視点で発見・創造・活用するか、
ブランドの価値を分かりやすく発信・伝達するデザインのポイント、
これらについて、とても分かりやすく解説いただきました。

続いてのワークショップでは、
重要なブランドシンボルであり、多くの事業者の方々の悩みの種
「ネーミング開発」を取り上げました。
渋谷氏からのネーミング開発に関する簡単な講義の後、
「黒米のどぶろく」のネーミング提案を課題に
3グループに分かれてのディスカッションを行いました。
短時間ながらユニークなアイディアが飛びだし、
大いに盛り上がりました。

参加した皆様からは、
「ブランドづくりの流れは今後の仕事に役立つ情報でした。」
「ネーミングという視点からセミナーを受けたのは初めて。
とても勉強になりました。」

など、好評の声が寄せられました。

セミナーの最後は、北海道が作成したガイドブック
「地域ブランドづくりのためのデザイン・IT活用ガイド」
のご紹介を行いました。
地域ブランドづくりに携わる全ての方、必読の内容です!

ガイドブックは無料ダウンロードできます。
ぜひご活用ください。

■「地域ブランドづくりのためのデザイン・IT活用ガイド」
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kz/ssg/it/katuyougaido.htm

参加した皆様にとっては、
ブランドづくりに欠かせないデザインの役割について学び、
更に、具体的なネーミング提案ワークショップを行うことで、
より理解を深め、実践的なノウハウを得る
貴重な機会となったようです。

HDMFでは、デザインマネジメントにおける重要なテーマ
の一つとして「ブランドづくり」を位置づけています。

今後もブランドづくりとデザインについて、
皆様と一緒に考える機会を設けたいと思っています。

(HDMF理事 万城目 聡)

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【2】デザインマネジメントコラム
  ◇「付加価値、基本価値」をもう少し掘り下げてみる!
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本メルマガでは、
HDMF役員メンバーが持ち回りで、
デザインマネジメント関連の話題をコラム発信します。

今回は、前回のコラムで取り上げた
「付加価値、基本価値」という概念を、
もう少し掘り下げてみます。

付加価値という言葉は、様々な分野・場面で使われます。
ただし、その意味や使われ方も様々です。

経済学では、
付加価値=企業活動(生産、販売)の過程で新たに加えられた価値
    =[売上高]-[原料費(仕入れ原価)など全ての中間投入額]

この定義は、生産・販売活動を前提に、
それらから生じた価値を付加価値としています。
付加される元となったのは、原材料等の価値です。
この定義は、生み出す側の視点で付加価値を捉えています。

一方、価値とは何か、その認識、事実との関係、体系などを
哲学的、経済学的に扱う「価値論」という分野があります。
この分野の今日的な理解では、
「価値の根源は、人間の欲求・欲望にあり、
 事実とは区別されて、認識されるもの。
 認識される価値の内容は、
 判断の主体たる個人や集団に依存する相対的なもの。」
と捉えているようです。

この認識は、生み出す側ではなく、
受け止める側に立った価値定義です。
この視点で付加価値を捉えると、
付加価値とは、「ある対象に対して、それを受容する人が
認識する価値のうち、付加的と考える価値」と言えます。

この定義が、私には、一番しっくりきます。
デザインやブランド論などで、使われている付加価値の意味も
受容者視点に立った上記の定義に近いものと思っています。
このとき、付加される元となるものが、基本価値です。

何を基本価値と見なし、何を付加価値と見なすか、
受け止める人に依存し、固定的に決められない。
これは、とても重要な認識と思います。

ただし、そうは言っても、
人が認識する価値の内容を捉える中で、
基本価値、付加価値について、大枠の概念整理ができそうです。

◆基本価値とは、
 商品やサービスなどが、そのカテゴリーとして存在する上で、
 最低限必要な価値と見なします。
 言い換えると、
 ・そのカテゴリー商品等に求められる基本機能、
  いわゆる機能的価値。ただし、性能のレベルは
  問わない。
 ・使えること、役立つこと。つまり、利用時に得られる
  実用性のこと。

◆付加価値とは、
 基本価値以外の価値であり、次の3つの要素があると見なします。
 ・便宜価値
  商品やサービスを便利にたやすく購買できることや、
  使用の際の利便性や使いやすさ、といった価値
 ・感覚価値
  商品やサービスの使用に当たって感覚器官に訴求する
  官能性や、嬉しい・懐かしい・楽しいなどの感情を
  引き起こす価値
 ・観念価値
  希少性、神秘性、物語性、親和性と言った
  商品やサービスに付随して生じた価値

いかがでしょうか。

この整理が、必ずしも正しいとは言い切れませんが、
デザインを考える上で役立つと思っています。

前号のコラムで紹介したように、
デザインは、基本価値にも付加価値にも関与します。

成熟した商品では、基本価値は当たり前品質、
顧客にとっての魅力にはなり難く、
デザインによる新たな付加価値(便宜・感覚・観念価値)
の創出が有効です。

また、デザインの活用は、従来のカテゴリーに無い
新しい商品やサービスなどを生み出し、
新しい基本価値、あるいは、新しい基本価値と付加価値の
両方が提供されます。
このとき、従来の顧客価値の革新(イノベーション)を
引き起こし、大きなビジネス上の成功をもたらします。
アップル社の一連の成功は、
このタイプのデザイン活用と言えます。

皆さんが取り組むデザイン活用は、
どのような価値創出をねらっていますか。

「価値=基本価値(機能的・実用的価値)
    × 付加価値(便宜・感覚・観念価値)」

と言うフレームが、デザイン活用戦略を
考える上で役立ちそうです。


(HDMF理事  及川雅稔)

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【3】デザイン関連のイベント・必読ブログ紹介
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道総研 工業試験場 成果発表会!!

日 時:平成23年6月2日(木)11:00~17:30
会 場:ホテル札幌ガーデンパレス 2階

HDMF理事の日高さん、万城目さんによる研究発表もあります。
ふるってご参加ください。

詳細と、お申し込みはこちらから
http://www.iri.hro.or.jp/techinfo/forum/11/topics-event20110602.htm

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我々のメンターが発信する必読のブログ!!
「元気な企業を創るデザイン」
http://crewdesign.blog137.fc2.com/

一周年記念ゲスト講演会(H21.9.4)でお招きした
HDMFのメンター馬場了氏((株)クルー代表)が
上記のブログで情報発信されています。

昨年、11月からスタートしたこのブログでは、
デザインの仕事とは? 新しい見方・考え方とは?
具体的な実践方法・成功事例は?・・・・
中小企業が、デザインで元気になる秘訣について、
大変示唆に富んだ情報が盛りだくさんです。

ものづくり企業の経営者にとっても、
デザイナーにとっても
必読のプログです。ぜひ、一読してください。!

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【編集後記】
皆さんこんにちは。
第3号の編集を担当したHDMF理事の及川です。
去る3月11日、未曾有の大震災が発生しました。
巨大地震、大津波、福島原発事故、計画停電、風評被害と
大きな苦難が、二重三重と東日本を中心にもたらされました。

皆様におかれましても、少なからず影響があったかと思います。
お身内や仕事上の関係者なども含め被災された方々に、
心からお見舞い申し上げます。

本号では、3/10に開催したデザインマネジメントセミナーを
紹介しました。講師の渋谷氏は、翌日帰京予定でしたが、
大震災の影響で札幌に足止めとなったようです。
その後、無事帰京され、我々もほっとしたところです。
セミナー、終了後の交流会ともに、大盛況でした。
ブランドの確立・強化は、デザイン活用の最終ゴール、
今後ともぜひ取り上げたいテーマですね。

今回のコラムでは、前号で取り上げた「付加価値と基本価値」を、
再度取り上げました。
きっかけは、北海道建設新聞(平成23年4月15日)の記事です。
「東日本大震災・識者の提言」をテーマとする
リレーインタビュー記事の第一回目として、
私が所属する道総研の丹保理事長による提言が掲載されました。
この記事の中で、付加価値、基本価値という言葉が出ています。
その箇所の前後を抜粋すると、

「大震災をきっかけにこれまでとは違う暮らしを
 考えざるを得なくなっている。
 日本は、近代の次の時代に進むための先駆者になるべく
 引き金が引かれた。
 次の時代の社会を考える際に、重要なことは、
 付加価値を求めないということ。
 人が生きていくための本質とは何か、という基本価値を
 認識すること。」

デザインは、基本価値にどれだけ関われるか、
重要なテーマを投げかけられたように感じました。

被災地における避難所等での生活改善に向けた
中小やベンチヤー企業の製品・技術に注目が集まっています。
おそらく復興の取り組みは、長期にわたるでしょう。
被災者の不便や不安、負担を軽減し、暮らしに喜びをもたらす
ために、デザインがどのような価値を提供できるか。 

このような機会に、HDMFは何を考え行動すべきか。
いろいろ考えさせられます。

メルマガについては、会員の皆様のご要望を受け止め、
ご愛顧いただける情報発信を目指します。

ぜひ、忌憚のないご意見・ご感想をお寄せください!

(HDMF理事 及川雅稔)